行政書士の書類作成代理権及び行政書士による交渉の限界について

当事務所では、弁護士法第72条に定める訴訟等の事件と同視すべき程度の紛争に発展していない事件において、依頼者様から受けた書類作成のご依頼に付随して、相手方となる方との間での権利義務に関する書類の作成に付随する調整、連絡等を代理人として承っております。

このことについて、一部のインターネット上では、「行政書士が交渉を担うのは全て違法」「代理人に就任するのは違法」といった発信もなされております。したがって、当事務所では、こちらで見解及び法的根拠を明らかにしておきたいと考えます。

行政書士の書類作成代理権について

私たち行政書士は、「権利義務に関する書類の作成」を独占業務としており、かつ、弁護士や司法書士のような利益相反しうる事件、事件の周旋等に関する厳しい受任禁止規定がなく(但し、民法の利益相反行為に関する規定は適用されます)、また、平成14年7月1日の行政書士法改正により上記書類作成を「代理人として」行うことができるようになったことから、依頼者様の依頼を受けて、例えば潜在的には利害が対立する余地のある共同相続人らの間での交渉を代行し、関係を取り持つなどの調整をしながら、最終的には(相続事件であれば遺産分割協議書など)書類の作成をおこなうことを業務とすることができます(※1)

インターネット上で発信されている「行政書士には代理人となる権原自体がない」などの説明は、平成14年の法改正より前の行政書士法を前提とした古い内容なのではないかと考えます。

このような調整役の役割を担うことは、弁護士や司法書士には、鋭い対立や裁判沙汰を前提として、利益相反の範囲を民法のそれよりも広く捉える規程等に服しており、些細な手落ちが容易に懲戒につながってしまうことから、事実上困難であり、結局は、鋭い利害対立が現に起こっているわけでもないのに、各自が別々に代理人を立てざるをえないことになり、全体では非常に高額な専門家報酬を支払うことなりかねないというリスクがあります。

他方で、一部では、行政書士は、旧代書人規則(大正9年11月25日内務省令第40号)や東京都行政書士条例(東京都条例第34号)では利益相反禁止規定があったのに、それが行政書士法の制定にあたり削除された経緯があるから、利害が対立しうる案件に関与する資格を欠く、という指摘もなされています。

しかしながら、人間どうし、生きもの同士のことで、とにかく万事、刀を抜き、事を荒立てれば良いということはほとんどありません。

かえって、関係者のうち一人が弁護士を立ててきたから、こちらも弁護士を立てようということになって、結局は裁判にもつれ込み、解決に何年もかかったというのは良くある話です。

あくまでも書類作成など手続きを主要業務とし、「敵」と「闘う」ことを業とはしない行政書士が交渉に関与することの意義、本懐は、この辺りにあるのではないかと思います。

このように、行政書士による代理人業務は、裁判所での手続きを中心として権原を有する弁護士・司法書士とは異なった行政書士特有の権能であると当事務所は考えます。

また、司法書士は、認定司法書士でなければ一切の契約書作成権原がなく、認定司法書士であっても、140万円を超える紛争については(和解等の)契約書を作成することはできません。

そのため、係争額140万円未満の事件については、交渉そのものは、裁判所での手続きが不可避な段階まで紛争化している事件であっても認定司法書士にも依頼できるものの、140万円を超える事件については行政書士と依頼できる範囲は同じである一方で、行政書士と異なり、交渉の結果として合意できた内容を書面化すると行政書士法違反になるという不合理極まりない結果を招くことになります(※2)

これらを総合すると、行政書士による交渉、代理業務は、訴訟に関与する権原が付与されていない分、かえって弁護士・認定司法書士を利用した訴訟手続きよりも小回りが利き、かつ相手方となる方にも柔らかい印象を与えられ、平和的に問題を解決することに資する”行政書士”固有の業務態様として、依頼者様のお役に立てることと存じます。

事件が紛争性を有するに至った場合について

他方で、裁判所での手続きや、裁判所での手続きがほとんど不可避といえる程度に紛争が熟成している状態の事件については、行政書士は関与することができません(※3)

このような場合は、弁護士、認定司法書士をはじめとする他の専門家をご紹介し、改めてご依頼いただくか、訴訟手続きについての一般的なご説明をしたうえで、ご本人で訴訟等に臨んでいただくことになります。

しかしながら、訴訟というのは、依頼者様にとっても、相手方の方にとっても等しくコストが大きく、時間がかかり、それでいて実入りの乏しいものです。

当職は行政書士として、事件が裁判沙汰に発展せず円満に解決するよう、相手方の方、その代理人の方を含む”ひとの気持ち”を大切にして最大限努力してまいりますので、ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。

※1 『詳解行政書士法』(地方自治制度研究会 著)
弁護士法第72条の規定が,争訟性のない契約代理について弁護士以外の者が行うことを禁じているものでないことを前提に,行政書士が代理人として契約その他の書類を作成することができるとしたものである。
ここでいう「代理人として」とは,契約等についての代理人としての意であり,直接契約代理を行政書士の業務として位置付けるものではないが,行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。また,行政書士は契約書に代理人として署名し,契約文言の修正等を行うことができる。

※2 平成23年2月29日福岡法務局長(認定司法書士に対する懲戒処分)
被処分者は,140万円を超える事件の和解契約書の作成についても,反復継続的に行うとともに,代理行為と同じ基準による報酬を請求し,これを受領している。被処分者のこのような行為は,実質的に弁護士法第72条(非弁行為)に違反するものであり,業として権利義務に関する書類を作成したという観点からは,行政書士法第19条(業務の制限)にも違反するものである。

※3 平成27年9月2日広島高裁判決
イ 弁護士法第72条は……このような立法趣旨,さらに同条違反が処罰対象になることも考慮すれば,同条の言う「その他一般の法律事件」とは同条において列挙された事件と同視しうる程度に法律上の権利義務に関し争いや疑義があり,又は,新たな権利義務関係の発生する案件をいうと解するのが相当である。
増補弁護士法』(福原忠男 著
一般の法律事件とは、訴訟等実体法上事件と呼ばれている案件、及びこれと同視し得る程度に法律関係に争いがあって事件と表現されうる案件をいう。

代理人としての書類の受領について

弁護士職務基本規程第52条には、「弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当
な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない」との規定があります。また貸金業法にも同旨の規定がございます。

これにより、代理人として認定司法書士・弁護士を選任すると、債権者代理人などからの一切の連絡が代理人のほうに来るという効果がございます。

この点、行政書士は、上記により「直接契約代理を行政書士の業務として位置付けるものではないが,行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含む」ものであることから、「法令上の代理人」に該当する余地はあると考えますが、他方で、あくまでも「直接契約代理を行政書士の業務として位置付けるものではない」ため、当然に「法令上の代理人」であるとして当事務所への書類送付を、相手方代理人の弁護士・認定司法書士の先生方に強制できるものではないと考えております。

したがって、当事務所では、無用に非弁活動ではないかとの疑義、指摘を受けないためにも、相手方若しくは代理人の先生方に対し、当事務所が代理人に就任したとして一切の連絡を当事務所に送達させることを求める運用はしておりません。

他方で、任意に、当事務所に依頼者宛の書類をご送付頂ける場合は、責任をもって本人に引き渡し、調整の上誠実にご対応致しますので、これを歓迎致します。

弁護士職務基本規程(日本弁護士連合会)
(相手方本人との直接交渉)
第52条 弁護士は,相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは,正当な理由なく,その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない。

貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

債権管理回収業に関する特別措置法(平成十年法律第百二十六号)
(業務に関する規制)
第十八条
 債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない。

当事務所の報酬体系について

当事務所では、代理行為や交渉の成果に対して、それによって得られた金額や、支払を免れた金額の〇〇%を報酬とするというような所謂成果報酬型の報酬を依頼者から受領することはありません。

なぜかと申しますと、行政書士は書類の作成とその提出代理がその独占業務の本質的な要素になるので、その報酬は、書類が作成された時点、あるいはその提出が完了した時点で確定するべきであり、依頼者様がその書類を利活用したことによる効果・成果が発生する時点において、その存否や大小に基づいて確定するべきではないからです。

上記のとおり、訴訟等に準ずる程度に紛争が成熟していなければ、行政書士は依頼者の代理人として交渉に関与できるというのが法令に基づく当事務所の見解ですが、報酬に関しては、あくまでも、直接行政書士業務であると位置づけられている「書類の作成」により頂戴することとしております。

また、当然のことながら、弁護士等の他士業の紹介に対する報酬、紹介させていただいた他士業者の業務の成果に対する報酬は一切設けておりません。それどころか、当事務所はいわゆる紹介料・キックバックの受領を、士業関係に限らず一律にお断りしております。

これは、収入は、自ら汗してした労働の成果からのみ得るべきであるという当事務所代表の考えに基づくもので、そのようなお申し出をいただいた場合、その分をお客様への値引に充てていただくようお願いをしております。

平成30年10月30日 弁護士 大村真司『非弁行為をした行政書士を措置請求』
(元)依頼者から契約書の提供を受けました。その内容を確認すると、書類作成に関する手数料ではなく、弁護士と同様の着手金&成功報酬という体系になった上、弁護士を紹介して弁護士により解決した場合には半額の成功報酬が発生するという、条項が入っていたのです。
取れた額に応じて報酬が発生するということは、交渉により損害額を引き上げることが仕事の内容になっているということになります…

平成30年12月20日 広島県行政書士会『広島弁護士会による当会会員に対する県知事懲戒措置請求事件にかかる当会の判断について
…本会員は,本件業務を受任する際に,弁護士の周旋禁止規定(弁護士法72条。弁護士を紹介等して報酬を得る行為の禁止に関する規定)に反するかのような条項を記載した委任契約書を依頼者と交わした…
※ちなみに、この措置請求事件は結果として棄却され、懲戒しないという判断(行政書士側の勝訴)で終結しています。広島会は、「判断」を変更、撤回した方が良いのではないかと個人的には考えています。

お問い合わせ・書類送付先

〒174-0056 板橋区志村一丁目35-10
行政書士 第一ストアー事務所 
賃貸管理 さかなのきもち事務所

日本行政書士会連合会 登録第23080525
適格請求書登録番号 T9810271090547

※営業時間外でも転送されますので、お急ぎの場合はご遠慮なくお電話ください。
※書類のお届けをお急ぎの場合は、ヤマト運輸の宅急便タイムサービス(翌朝10時までのお届け)での発送若しくはお電話で当事務所の集荷をご用命ください。

    代表 行政書士 宮城 史門
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