みんな仲間、みんなしあわせ。
自由な海をゆく魚たちのように……
私は、東京都板橋区出身ですが、高校3年生の頃だけ高知市にいたことがあります。
そこで、行政書士登録の少し前にも、半年だけ高知にUターン(?)して、旧知の社会保険労務士の先生の事務所で働いていました。
家賃はたったの2万円で、サニーマートに夜9時頃に行けば半額のパンがたくさん手に入り、生活費が安くお金のかからない高知での生活は本当に私の性に合っていました。
しかし、ある日、東京で家賃を保証していた友人から連絡が入り、なんでも、保証した家賃を滞納しそうだから、代位弁済してもらうことになるかもしれない、申し訳ないということでした。
とんでもない事態です。
当時、高知県の最低時給は未だに800円台で、社会保険労務士事務所にしても月給12万円程度でした。東京のようにUberなどギグワークの仕事をしても、人口が少ない高知の街ではお金になりませんから、こういう予定外の請求を受けてしまうと、正直どうにもなりません。
自営で収入を得るのが難しい以上、雇用されて収入を得るしかありませんが、平日昼間は社会保険労務士事務所で働いていますから、ダブルワークとなれば朝か夜しかありません。
夜のアルバイトをすると、だいたい脂っこいものを食べてしまい、たちまちの内にとんでもないデブになってしまいますから、朝の仕事をするしかないと思いました。
そうして、私が目に留めたのは、高知市中央卸売市場のすぐそばで魚の乾物を製造する会社の求人だったのです。

それから、毎朝2時半に起きて、お魚たちと文字通りふれ合いながら過ごす生活が始まりました。
高知県は、言わずと知れたお魚天国です。図鑑を見ても、日本で捕れる魚の大部分は高知県でも捕れること、高知県内の港町由来の地方名が付いていることが分かります。
ですから、その高知の中央市場にはありとあらゆる種類のお魚が並ぶのです。
それらの魚たちの全てを乾物会社で扱うわけではありませんでしたが、会社がほぼ市場の中にあることもあり(というより、高知市弘化台という地域自体が人口島になっていて、その島には市場とその関連会社しか入っていないのです)、毎日のように市場に立ち寄っては、魚や野菜を買って祖母や母の家に届けに行きました。
魚たちは、みんな幸せ。
お魚たちと毎朝過ごす中で、私はあることに気がつきました。
ひとつは、お魚たちは、人間のようなワガママを言わないということです。例えば、人間の場合は、自分が儲かる話には喜んで飛びついていくけれども、自分が損をする話になると、すぐにウソをついたり連絡が取れなくなったりすることがあります。
しかし、魚たちは、自分が他の魚を食べるのは良いけれども、自分が食べられるのはイヤだというようなワガママは言いません。
市場に行くと、ちょうど魚が、今まさに別の魚に食べられているところで網にかかったものを見ることがあります。また、魚を捌くと、そのお腹の中に別の魚がいることもありますが、今まさに食べられようとしているというのに、魚たちは顔色ひとつ変えません。

もちろん、魚たちも、なるべく長生きする努力、沢山の子供を残す努力はするのですが、例えば、サバであれば自分が産んだ卵でも食べてしまいますし、何かを所有したいとか、他の個体、他種の魚と比べて優位に立ちたいとか、その種のエゴを魚たちは持っていません。
人間たちのトラブルや不幸は、大体、「自分が」何かを欲しいとか、何かでありたいとか考えていて、残念ながらそれが満たされなかったとか、他人が自分の欲しいものを持っているとして、不幸だ、損をしたと考えることが原因です。
ところが、魚たちは、誰がどのエサを食べても文句を言いませんし、それを取り合うようなこともしません。
つまり、魚たちは、「自分が」というエゴを持たないがゆえに、生まれてから死ぬまで、基本的にずっと幸せなのです。
例えばお金とか学歴とか結婚とか、色々とありますが、何らかの特別な条件を満たさないと幸せになれないと深く深く思い込み、それが満たされないとして悩み、苦しみ、そして争う人間たちと比較して、魚たちは、とても心豊かに生きていると思いませんか。
魚たちは、みんな仲間。
さらに、私が気づいたのは、魚たちは、みんな仲間だということでした。
魚は、もちろん大きい魚が小さい魚を食べるのですが、では小さい魚は何を食べるかというと、海藻や、非常に小さい海中のプランクトンを食べます。
では、そのプランクトンはどこから生まれるのかというと、海の本当に底のほうでは、熱水噴出孔などから地底のエネルギーが放出されていて、そのエネルギーが微生物を作り、やがてはプランクトンになり、それを深海魚たちが食べるということになっているのです。
そして、その深海魚たちには、深海と浅瀬をタテ方向に往復しているものも多くあり、浅瀬まで来たところ、あるいは途中で私たちがよく見る食卓の魚であるサバやブリ、カツオなどに食べられてしまうのですが、これにより、深海より更に下の地底のエネルギーが浅瀬まで、さらには人間や鳥類が浅瀬の魚を食べることにより地上、空中にまで伝達されていくわけです。
その人間や鳥たちもやがては死んでしまうのですが、実際、海底の貴重なエネルギー源の、熱水噴出孔以外のもう一つは、浅い海から段々沈んでくる生物の死骸や糞などであるというのですから、良くできています。
つまり、魚として生まれて、泳いで泳いで、最後は別の魚や鳥、人間に食べられてしまうこと自体が、地球全体のエネルギー循環のために重要な仕事なのであり、そのどこか1つでも欠くと循環が止まってしまうのです。
人間でいえば臓器のように、各種類の魚たち、生物たちにはそれぞれの役割があって、どれ1つでも欠くことができないが、かといって、どれか1つだけで機能するというものでもないということになります。
つまり、魚たちは、お互いに捕食者と被捕食者の関係にあるように見えて、実際はみんな仲間であるわけですし、食べることにも、食べられることにも意味があるのです。
そういえば、高知では、ハダカという深海魚が良く捕れます。冬の終わりから春にかけては、毎日のように会社に運び込まれてきました。ハダカは身が太いので、乾物にするのは大変でしたが、深海で生きる魚たちの神秘に思いを馳せながら作業を頑張りました。

東京でも忘れたくない”さかなのきもち”
結局、高知には半年ぐらいしか居られませんでしたが、市場や乾物会社での体験を踏まえて、人間には、魚たちから学ぶべきことが数多くあると考えるに至りました。
東京に戻ってみると、相変わらず、他人ではなく自分がお金を稼ぎたいとか、他人ではなく自分が良い大学に行きたいとか、誰もが数少ない幸せのパイを取り合っていて、お互いに不相当な努力をしたり競争したり、あるいはもめ事を起こしたりして、せわしなく過ごしています。
そこで、せめて私だけでも、魚たちのように無私の心で、与えることを惜しまず、また、生きものは生まれつき幸せであるのだと自信をもって、行政書士、宅地建物取引士として仕事を頑張ろうと思い、事務所名に「さかなのきもち」と掲げることにしました。
さて、行政書士は、開業登録にあたり、イヤでも事務所名を付けなければなりません。
登録当時は、正直、納得のいく良い名前が思いつかなかったので、無難に「志村第一ストアー」という建物名から取って「志村第一」事務所とか「第一ストアー」事務所といった名前で、とりえあず登録だけして維持していました。
しかし、今度、その第一ストアーから出ていくことになり、以前から温めていた「さかなのきもち事務所」という屋号を出すことにしました。
マグロは、文字通り24時間泳ぎ続けて、日本からアメリカまで渡っていくそうです。
上に述べた通り、魚たちは、食べたり、食べられたりしてエネルギーを運ぶのが仕事ですから、その意味では泳ぐことが仕事であり、ずっと泳いでいるということは、魚たちはとても勤勉だということになります。
そこで、私も、お魚たちに負けないように勤勉にやっていきたいと思いますので、今後とも皆さまどうぞよろしくお願い申し上げます。
参考文献
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行政書士 第一ストアー事務所
賃貸管理 さかなのきもち事務所
日本行政書士会連合会 登録第23080525号
適格請求書登録番号 T9810271090547
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